
キャリアブレイク中の暮らし
「キャリアブレイクを選んだ人は、どんな経緯でその決断に至り、今どんな暮らしを送っているのか」
そんなテーマで、これから実際にキャリアブレイクを経験している方々にインタビューをしていきたいと考えています。
その前に、まずはフリーランスで0歳の娘がいる私のことをお話ししたいと思います。
キャリアブレイクして間もなく妊娠がわかった
2024年の夏、東京での暮らしは残り1年に満たない見通しでした。夫の希望で、2025年春に故郷の福岡へ移住することが決まっていたからです。
会社を辞めたばかりの私はこれからチャレンジしたいと思うことに少しずつ踏み出し始めていました。憧れていたホテルでのアルバイト面接を受けたり、父の仕事を手伝ったり、個人事業を営む方の話を聞いたり。
そんな矢先に妊娠がわかりました。出産予定日は、福岡への移住を予定していた2025年の春。
嬉しさと同時に、描いていた計画が崩れていくような不安と、「赤ちゃんは無事に育ってくれるだろうか」「いつまで東京で暮らせるだろうか」という先の見えない心配に包まれました。
思いがけないかたちでフリーランスへ
そんなとき、ご縁のあった会社の社長から、私の専門である建築の知識を活かせる業務委託のお話しをいただきました。自宅で進められる資料作成の仕事で、時間も自由。体調に合わせて働ける環境に魅力を感じ、ぜひ挑戦したいと思いました。
ところが初回の打ち合わせ前日、急に吐き気に襲われ、体を動かすのもつらい状態に。始められるのか不安でしたが、翌日にはなんとか落ち着き、契約を結んでフリーランスとしての仕事がスタートしました。
それ以降、悪阻はさらに悪化し、2か月ほどはほとんど外出できず、心身ともにボロボロでした。憧れていたホテルでの仕事は諦めるしかありませんでした。
それでも、自宅で進められるこの仕事があったことで「社会とつながっている」という感覚を持てました。妊娠中の厳しい時期を乗り越えるうえで、この仕事は本当に大切な存在だったと感じています。
出産前後の生活拠点と仕事

当初2025年春に東京から九州へ引っ越す計画がありましたが、出産時期と重なるリスクがありました。そのため、1月には大分の実家に里帰りし、家族の支えを受けながら生活を送ることにしました。
業務委託のお仕事はそのまま継続し、加えて知人の紹介からウェブ制作やデザイン制作のお仕事もいただいていました。結果的に、出産の数日前まで作業を続けていたほどです。お仕事自体が楽しかったことに加え、フリーランスは出産に関連して得られる給付が会社員より少ないこともあり、「今できる範囲で収入を得たい」という気持ちが強くありました。
そして3月下旬、無事に娘を出産しました。いつから仕事を再開するかは決めていませんでしたが、2~3週間後にいただいたお問い合わせをきっかけに、自然な流れで少しずつ仕事を再開。産後1か月が経つ頃には大分の実家を離れ、夫が先に暮らし始めていた福岡の家へ移り、家族3人の新生活が始まりました。

0歳児との暮らしー時間をどう確保するか
幼いわが子は本当に可愛くて仕方ありません。でも、同時に「仕事がしたい」という気持ちもあります。
「娘の寝ている間に仕事を進めよう」「抱っこしながら作業できるかな」――いろいろ試しましたが、そう簡単にはいきません。
そこで、生後2か月のときに保育園を調べ始め、福岡市のベビーシッター制度を知りました。生後3か月で保育園の申込みをした家庭は、1時間400円でシッターを利用できるという制度です。
それから現在(生後5か月)まで、保育園は定員オーバーのため週3日・各4時間、ベビーシッターにお願いしています。最初は「保育園で娘と離れるのは寂しい」と思っていましたが、シッターの場合は隣の部屋に娘がいて声も聞こえるため、安心して取り組めています。
ただし、この制度は生後6か月(9月末)が利用期限。10月からは0歳児の枠に空きのある保育園に預ける決断をしました。もちろん葛藤はありますが、それでも預けようと決めたのは、シッター利用初日に大きな気づきがあったからです。
それは「他の人に見てもらった後、抱っこするわが子はいつにも増して可愛い」ということでした。これまでは「仕事時間をどう確保するか」を気にしてしまい、娘に100%向き合いきれない自分がいました。でも、自分のやりたいことに集中できた後は、娘と過ごす時間にしっかり向き合えるようになったのです。
さらに、私が仕事をしている間も娘は音楽を聴いたり遊んだりと、豊かな時間を過ごしています。そのことも、とても嬉しく感じています。
今後のビジョン
将来的に会社員に戻る可能性もありますが、今のところ具体的な予定はありません。会社員であれば収入は安定しますし、「東京でがむしゃらに働いた日々も楽しかったな」と振り返ることもあります。
でも今は、家族との時間に柔軟性がある働き方を選び、幼い娘のことを理解してくださるお客様や仲間に恵まれていることを大切にしたいと思っています。
今後の目標は、「家族の未来を支えられる基盤を整えること」です。娘がやりたいことを心から応援できる環境を作りたい。そのために自分のビジネスを育てていきたいと考えています。
今はインターネットやAIの普及で、これまでの障壁がぐっと低くなっています。急速に世の中が変化しているこのタイミングでフリーランスでいられる運の良さを活かしていきたいです。

