英語で拓くキャリアは続く:通訳ガイド・石川弘さん

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こんにちは、Sachikoです。

英語を「話せるスキル」で終わらせず、
どうキャリアにつなげ、どう人生に生かしていくのか。

このブログでは、英語を軸に自分らしい道を切り拓いてきた方々の、
等身大の経験と選択をお届けしています。

今回のゲストは、石川弘(いしかわ・ひろし)さんです。
製薬会社で長年キャリアを重ね、アメリカ、オランダ、フィリピンの3か国で海外駐在を経験。
定年退職後は、通訳ガイド(全国通訳案内士)、財団での活動、英語勉強会の運営と、
いくつもの顔を持ちながら、今もなお精力的に活動されています。

私自身、キャリアの後半に差しかかり、
「いつか通訳ガイドをやってみたい」と思うようになりました。

そこで今回は、
英語とキャリアの関係、そして通訳ガイドという働き方について、
石川さんにじっくりお話を伺いました。

通訳ガイドをする石川さん

「英語は、会社に入ってから本気でやり始めました」

—— 海外駐在を何度も経験されていますが、英語はもともと得意だったのでしょうか?

「いえ、決して最初から得意だったわけではありません。
大学は薬学部で、卒業後は中小の製薬会社に入りました。ちょうど会社が海外進出を目指し始めた時期で、私は国内営業に配属されたんですが……国内営業は、完全な“レッドオーシャン”だったんです。

一方で海外部門を見ると、人が足りない。
『ここなら勝負できるかもしれない』と思ったのが、最初の動機でした」

当時、社内では「社内英検」という制度があり、
合格すれば国際部勤務を経て、海外駐在のチャンスが得られる仕組みがあったそうです。

「英語自体は好きでしたが、本気で勉強し始めたのは入社後です。
高校時代に英検2級を取った程度。社内英検は3回目でようやく合格し、国際部に配属されました」

国際部での最初の3年間は、徹底した“書く英語”の訓練。

「テレックスや英文メールの書き方を、徹底的に叩き込まれました。
課長に原稿を出すたび、赤字だらけで返ってきて……」

どれくらい書けば英文はうまくなるのか、と聞いたときの答えが印象的だったそう。

「『1トントラック一杯分くらい書いたらね』って(笑)。
今思えば、あれがすべての土台でした」

駐在地ごとの記憶――ニューヨーク(米国)、アムステルダム(オランダ)、マニラ(フィリピン)

—— 特に印象に残っている国はありますか?

「どの国にも思い入れはありますが、やはり最初のアメリカ、ニューヨークですね。
30歳直前での赴任で、当時は日本人なら誰もが憧れる街。
あの文化の中で生活できたことは、今でも鮮明に覚えています」

最後の赴任地・フィリピンでは、経営者としての経験を積みました。

「ジェネラルマネージャーとして、営業、労務、会計まで会社経営の全体を見る立場でした。労使問題がこじれて、脅迫状のようなものが届いたこともあり、本社と緊急で相談したこともありましたね」

オランダでは、ヨーロッパならではの価値観に触れたといいます。

「皆、自分なりの“人生の楽しみ方”をよく知っている。
仕事と生活のバランスの取り方には、本当に学ぶことが多かったです」

「英語を維持し、海外でお世話になった方々への恩返しがしたかった」

—— 定年後、通訳ガイドを目指された理由は?

「理由は二つあります。
ひとつは、英語力を維持し、できればさらに高めたいという思い。
もうひとつは、海外でお世話になった方々への“恩返し”です」

駐在先では、現地の人々に名所を案内され、食事を共にし、多くの親切を受けた。

「だから今度は、日本に来る外国の方に、日本の文化や食、人の魅力を伝えたい。
そう考えたとき、通訳ガイドという仕事が一番しっくりきたんです」

製薬会社時代の経験も、今に生きています。

「英語力に加えて、コミュニケーション力ですね。
それに、ガイドをしていると必ず
『今までどんな仕事をしてきたの?』と聞かれます。
自分のキャリアそのものが、会話のコンテンツになるんです」

通訳ガイドの仕事は、こうして始まった

—— 通訳ガイドの資格(全国通訳案内士)を取得された後、実際にはどのようにお仕事を見つけたのでしょうか。

正直に言うと、資格を取ったあと、
“どうやって仕事を取るのか”はまったく分かりませんでした」

転機は、通訳ガイド二次試験(面接)対策講座。

「その講座を行っていた旅行会社の講師の方が、とても印象的だったんです。
『ここなら、きちんとガイドを育てている』と感じました」

その旅行会社は、築地観光を専門とする会社。
契約までのプロセスは、想像以上に本格的でした。

「まずはコミュニケーション研修を受けます。その後、実際に築地場外市場を廻りながら日本語で研修を受けます。次に一次試験として、他の日本人4人とともに場外市場を廻り、一人一人、ランダムに割り当てられた5コースのうち1コースを20分で英語で説明します」

一次試験を通過すると、実地の二次試験。

「二次試験は、外国人のお客様を実際にお招きして、90分間築地を英語で案内します。これに合格すればガイド委託契約、という流れでした。『これに受かれば仕事が始められるんだ』と思って、本当に必死でしたね」

二次試験翌日には連絡があり、無事合格、そしてその後委託契約締結。

「二次試験では、お客様(外国人)の評価が合否の重要要素だったようです。
ありがたいことに、良い評価をいただけたようでした」

初ガイドの日、忘れられない一言

コロナ禍を経て、2022年に通訳ガイドとしてデビュー。
最初のツアーは築地でした。

「正直、不安しかなかったです。
自分の英語と知識で、本当にお金をいただいて満足してもらえるのか、と」

しかし、90分のツアーを終えたあとの反応は、想像以上。

「『とても良かった』『もう何年もやっているかと思った』と言われて。
『実は今日が初めてなんです』と伝えたら、ものすごく驚かれて(笑)。
あのときのお二人の表情は、今でも忘れられません」

資格がなくてもできる時代に、あえて資格を持つ意味

—— 最近は、通訳ガイドの資格がなくてもガイド業務ができるようになっています。その点についてはどうお考えですか。
「確かにそうですね。私がお世話になっている旅行会社でも、英語のスピーキングクラブに所属している学生さんなど、非常に英語が流暢な方を、全国通訳案内士、地域通訳案内士の資格なしでガイドとして起用するケースが増えています」

では、資格を持つ意味はどこにあるのでしょうか。

「確かに、資格がなくても優秀なガイドはいます。
だからこそ、資格を持つ人間は
“その先で何を提供できるか”を常に問われると思っています」

差を生むのは、知識の深さ。

「日本史や文化の背景を、
『なぜそうなのか』『どうつながっているのか』まで語れるかどうか。
免許を持っているからこそ、そこを磨き続けないといけないですね」

通訳ガイドは「人間力」が試される仕事

—— 会議通訳やビジネス通訳との違いをどう感じますか?

「通訳ガイドは、お客様の関心や知識レベルに合わせて、情報をどう届けるかが重要です。反応を見ながら、相手が話したくなる“つつき方”をする。これは人との付き合いそのものですよね」

相手の関心を引き出せば、会話は自然と深まるそうです。

「人の能力や好奇心を引き出す力が、ガイドには必要だと感じています」

無理をしない。それが、長く続けるコツ

—— 現在、通訳ガイドのお仕事はどれくらいの頻度で入っているのでしょうか。
「一つひとつのお客様を大切にしたい、という思いが一番にあります。
ですので、今は週に1回、多くても月に6回くらいが、自分にとってちょうどいいペースだと感じています」

石川さんが大切にしているのは、量ではなく質。
数をこなすことよりも、毎回のツアーにきちんと向き合うことを選んでいます。

「通訳ガイドは、想像以上に体力も集中力も使いますし、何より一期一会の仕事です。
その場限りの出会いだからこそ、しっかり準備をして、お客様に心から満足して帰っていただきたい。
そのためには、自分にとって“無理のない頻度”を守ることがとても大切だと思っています」

現在は、通訳ガイド以外の活動ともバランスを取りながら日々を過ごしていますが、
少しずつ、次のフェーズも見えてきているそうです。

「現在は他の案件もあり、半日あるいは一日のツアーのみの対応ですが、今後体力を維持しつつ、もう少し長めのツアーにも挑戦してみたいですね」

走り続けるのではなく、立ち止まり、ペースを整えながら続けていく。
定年後もなお、自分自身と対話しながらキャリアを更新していく――
その姿勢こそが、石川さんの“長く続ける秘訣”なのだと感じました。

国連英検A級において日本国際連合協会会長賞を受賞されたときの記念写真

「英語を学ぶことは、世界観を広げること」

—— 現在も通訳学校で学ばれたり、複数の英語勉強会を運営されていますよね。私自身、その勉強会に参加させていただいていますが、そこまで英語学習に時間をかけ続けられるモチベーションはどこから来ているのでしょうか。


「私が尊敬している松本道弘先生が、よくこうおっしゃっているんです。
『英語を本当に理解するためには、英語で語られている“内容の背景知識”を十分に持っていなければならない』と」

その背景知識を、松本氏は「フレーム・オブ・レファレンス(Frame of Reference)」と呼ぶそうです。

「英語と日本語の両方を通じて、このフレームを広げていくことで、初めて本当のコミュニケーションができる。フレームが広がれば、英語を読むスピードも理解の深さも変わってくるし、同時に日本語での理解も深まっていくんです」

英語力と日本語力は、互いに影響し合いながら伸びていく。

「英語ができるようになる、というよりも、自分の世界観を英語と日本語の両方で広げていく、という感覚でしょうか。最終的には、松本先生のレベルに少しでも近づけたらいいなと思いながら学び続けています」

英語でキャリアを広げたい人へ

最後に、英語を生かしてキャリアを広げたい人、通訳ガイドに興味がある人へのメッセージを伺いました。

「とにかく最初の一歩を踏み出すこと。英検1級レベルを目標に勉強を始める、通訳ガイド試験を受けて現在地を知る。それだけでも大きな前進です」

現在地と目標地点との差を“見える化”し、小さく分解する。

「ギャップを小さな課題に分け、一つずつ埋めていく。その積み重ねが自信になります。千里の道も一歩から、ですね」

最後に

英語と真摯に向き合い続け、それをキャリアの糧にしてきた石川さん。
私自身、石川さんの勉強会に参加する中で、学び続ける姿勢に大きな刺激を受けています。

まず一歩を踏み出し、差を知り、少しずつ進む。
私も英語を通じて、これからの世界をさらに広げていきたいと感じました。

石川さんの勉強会に興味のある方は、ぜひ石川さんの X(旧Twitter をフォローしてみてください。

石川 弘 (@xBsEfCtt27dHUIh) / X

全国通訳案内士試験の情報はこちら: 全国通訳案内士試験概要|JNTO(日本政府観光局)

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By Sachiko

薄井シンシアさん主催、様々な人生ステージの女性が集い、励まし合う場「キャリアは生き方の会」(月1回対面開催)運営ボランティアの一員。地方自治体で国際職として約10年間勤務後、夫の転職に伴い東京へ移住。3人の子育てに専念するため、2年間のキャリアブレイクを経験。復職後、都内の複数の大使館で勤務し、50代で外資系医療機器メーカーに転職。現在、政府渉外担当部長を務めている。

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