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こんにちは、Sachikoです。
英語を「話せるスキル」で終わらせず、どのようにキャリアにつなげ、人生を豊かにしていくのか。
このブログでは、英語を軸に自分らしい道を切り拓いてきた方々の経験や挑戦を通して、読者の皆さまに新しい視点やヒントをお届けしています。
今回ご紹介するのは、English Library Café(ELC)代表の五味奈津子(ごみ なつこ)さんです(以下奈津子さん)。
英語学習というと、単語や文法、英会話レッスンを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし奈津子さんが提供しているのは、「英語で本を読み、語り合う」という少しユニークな学びの場です。
私自身も最近、このブッククラブに参加させていただきました。そこで驚いたのは、英語力そのもの以上に、多様な価値観や知識に触れられることでした。
参加者の方々との対話を通じて、知的好奇心が大いに刺激され、「大人になってからの学びって、こんなに楽しいものだったのか」と改めて感じたのです。
中学生でアメリカへ渡り、言語学を学び、メーカーやコンサルティングファームでのキャリアを経て、現在はEnglish Library Caféを運営されている奈津子さん。
その歩みには、「英語を学ぶこと」の本質を考えるヒントがたくさん詰まっていました。
突然始まったアメリカ生活。そこで直面した「言葉の壁」
奈津子さんがアメリカ・ミシガン州へ移住したのは、中学2年生の時でした。
それまで愛知県で育ち、英語は中学で学び始めたばかり。幼い頃に学研の教材『ハローワールド』のサンプル教材を楽しんでいた記憶はあったものの、中学1年生で習った英語のみでとてもちょっとした会話すらできるレベルではありませんでした。ほぼ丸腰の状態でお父様の駐在により渡米。案の定、現実は想像以上に厳しいものでした。
サンドイッチ店でトマトを注文しても通じない。
隣にいたお姉さんから「”トメイトゥ”だよ」と教えてもらい、ドキドキしながら小さい声で「とめいとぅ」と言うと、人生で初めて見るタイプの外見の人がよくわからない言葉で聞き返してきて、怖くて姉の後ろに隠れる。
そんなところからのスタートだったそうです。
現地校では、先生が何を話しているのかもわからない日々。
まず学校で覚えさせられたのは、”May I go to the bathroom?“
そして、学校でやっていくために覚えたのが、”I don’t understand.”という一言でした。
その後、中学英語を駆使しながら、”What’s my homework?” “Where do I go?” “This is mine. Can I have it back?” などと、学校生活における様々な状況にあわせて少しずつ自分で使える表現を増やしていきました。
「言葉が分からないだけで、自分が本来持っている力まで低く見られてしまう。そのもどかしさを感じながら、どうすれば自分のキャラクターを理解してもらえるのか、ずっと考えていました。」
言葉を持たないことで、自分自身を十分に表現できない。思春期ならではの苦しさもあったと振り返ります。

自ら経験した「英語を身に着けていくプロセス」が、言語学への扉を開いてくれた
高校卒業を目前に控えた頃、お父様の帰国が決まりました。
日本へ戻って大学へ進学する選択肢もありましたが、奈津子さんはアメリカに残り、現地の大学へ進学する道を選ばれます。
その背景には、「もっと英語を極めないといけない」という強い思いがありました。
「周りには、小さい頃からアメリカで育った帰国子女もたくさんいて、英語がとても上手でした。でも彼らの存在よりも、父親の会社の人のご子息の方で、慶応義塾大学在学中のお兄さんの存在が決め手でした。
そのお兄さんが私のハイスクールに遊びに来て一緒に授業を受けたのですが、アメリカ在住経験ゼロなのに、私の生物の教科書を初見で和訳したんです。私はアメリカ生活でこんなに苦労しているのに、日本でまじめに勉強していたらこれくらい簡単に読めてしまうのかと大きなショックを受けました。
スピーキングは日本の同級生には負けない自信はありましたが、読み書きはもっと頑張らないといけないと真剣に思ったんです。今思えば、当時高校1年生だったので大学生と比較してショックを受ける必要はなかったのかもしれませんが(笑)。ただ、このまま日本へ帰ったら、英語も日本語も中途半端になってしまうと危機感を覚えたんですね」
そんな奈津子さんに、家庭教師の先生が勧めたのが「言語学」でした。
社会言語学、音韻論、音声学。
言葉そのものを学問として探究する世界に触れたとき、それまで感覚的に捉えていた英語が、知的な探究の対象へと変わっていったそうです。
その後、ミシガン州立大学で言語学を学び、帰国後は筑波大学大学院へ進学します。
当時の夢は研究者になることでした。
しかし、人生は必ずしも思い描いたとおりには進みません。
研究環境とのミスマッチだけでなく、日本人英語学習者の研究をするにしても、そもそも日本人の英語レベルを理解していないのに、日本の英語教育界に意味のある貢献はできないのではないかというジレンマを感じ、「一度アカデミアから出て、一般社会に出てみたい」という思いが募るようになります。
5年間で修士・博士号を取得できる「一貫制博士課程」という特別プログラムに所属していたので、内心勿体ないという気持ちはありつつも、修士号を取得後、企業へ就職することになります。

メーカー、コンサルティング、そして英語教育へ
研究者という夢に区切りをつけた後、奈津子さんが選んだのはメーカーでのキャリアでした。
「アカデミアからの反動だと思うのですが(笑)、せっかくなら、物理的に次世代に残るものづくりに関わってみたいと思ったんです」
海外戦略部門に配属され、財務分析や海外展開の戦略立案に携わる日々。
英語力を活かしながら仕事に打ち込むなかで、日本の企業で働く大人たちの英語のレベル感や、英語のニーズに触れることになります。
メーカーでの数年の職務経験に満足したところで、自ら英語教室を立ち上げることを決意されます。
ところが、その後の人生では離婚という大きな転機も経験されました。
生活を安定させるため再就職を決意したものの、数年間の自営業は、キャリアのブランクと捉えられてしまい、想像以上に厳しい壁だったといいます。
「TOEIC満点、英検1級という英語力があっても、地元名古屋の大手メーカーに勤めたくてもなかなか書類選考が通らない状況でした。」
そんな中でご縁があったのがコンサルティングファームのKPMGでした。
メーカー時代に培った財務分析の経験を活かし、大手自動車メーカーの案件に携わります。
グローバルプロジェクトも多く、海外拠点とのコミュニケーションでは英語が欠かせませんでした。
こうして振り返ると、一見ばらばらに見える経験も、すべてが現在の活動につながる伏線だったように感じます。

40代で訪れた人生の転機。「やりたいことに全振りしよう」
コンサルタントとしての仕事は充実そのものでした。一方で、コロナ禍をきっかけにスタートした洋書ブッククラブに少しずつ手応えを感じるようになります。
本が好きな仲間を集め、徐々にコミュニティとして成長していきました。
当初は日本人だけで集まっていましたが、有償で信頼のおけるネイティブスピーカーにファシリテーションをしてもらう形に発展していきました。
そんな中、40代になって奈津子さんの中である気づきが生まれます。
「自分の人生なのに、本当に情熱を注げること以外に多くの時間を使っていていいのだろうか、と考えるようになったんです」
子どもを持たない人生を歩むことを受け入れたことで、自分自身の生き方と改めて向き合うようになったそうです。
そして、「やりたいことに全振りしよう」そう決意されました。
長年続けてきた安定した仕事を離れ、English Library Caféを本格的に立ち上げます。
その決断には勇気が必要だったはずです。
それでも、奈津子さんのお話からは不思議なほどの迷いのなさを感じました。
人生のどこかで、「何をしているときが一番自分らしいのか」という答えを見つけていたからなのかもしれません。
英語を学ぶのではなく、英語で教養を育む
English Library Caféの特徴は、「英語を学ぶ場」にとどまらないところにあります。
掲げているコンセプトは、「思考力と教養を育むスクール」です。
参加者は英語力向上だけを目的に集まっているわけではありません。
一冊の本を読み、問いについて考え、自分の意見を言葉にし、異なる価値観を持つ人と対話する。
そのプロセスそのものが学びになっています。
「本を一冊読むと、みんなが同じスタートラインに立てるんです。だから深い議論ができるんですよね」
実際に私が参加したときも、英語を学ぶだけにとどまらない知的好奇心をくすぐるブッククラブの魅力を感じました。
参加者のバックグラウンドは実に多様です。
企業で活躍されている方、研究者の方、起業家の方。
それぞれが異なる視点を持ち寄ることで、一人ではたどり着けない考え方に出会うことができます。

社会貢献への思い──ACCJでの活動と、子どもたちへのまなざし
奈津子さんは、ACCJ(在日米国商工会議所)中部支部の Children’s Fund でVice Chairも務めています。児童養護施設出身の大学生や専門学校生に奨学金を提供し、継続的な交流を通じて成長を支援する活動です。
この活動に関わるきっかけは、KPMGでサステナビリティ部門に所属していた頃の経験でした。
「”恵まれない環境にある子どもたちを支援する”と言っても、実際にその子たちが何を必要としているのか、私はよく分かっていなかったんです。本当に求められていることを知りたいと思い、ACCJの活動に参加しました」
Children’s Fundでは、奨学金を提供するだけではなく、定期的な交流会や面談を通して、学生たちと長く関わり続けます。
「一緒に遊んだり、近況を聞いたりする機会があるんです。奨学金を渡して終わりではなく、コミュニティとしてつながり続けることを大切にしています」
そうした活動を続ける原動力について伺うと、奈津子さんは少し照れながらこう話してくださいました。
「私、未来のある子供や若い世代と交流するのが好きなんです。支援している学生たちのことを、どこか自分の子どものような気持ちで見守っているのかもしれません」
英語教育でも社会貢献活動でも、人の成長に寄り添い、その可能性を信じる。そんな奈津子さんの温かなまなざしが、とても印象的でした。
英語の先にある世界を広げていくために
奈津子さんは、社会人にとって本当に必要な英語力とは何かについて、こんなふうにお話しされていました。
「英語そのものを仕事にするのでなければ、自分の専門性がまず大切です。その専門性の上に英語を載せていくんです」
法律、医療、研究、IT、経営。どんな分野であっても、専門性と英語が組み合わさることで可能性は大きく広がります。
さらに、その先に必要になるのが教養や文化的理解です。
英語が話せることと、海外の人と良い関係を築けることは必ずしも同じではありません。
本を読み、背景を知り、異なる価値観に触れること。
そうした積み重ねが、真の国際コミュニケーションにつながっていくのだと思います。

編集後記
今回お話を伺いながら感じたのは、奈津子さんの原動力は「英語」そのものではなく、「知りたい」「学びたい」という終わりのない知的好奇心なのだということでした。
中学生でアメリカへ渡り、言葉の壁に苦しみ、研究者を目指し、メーカーやコンサルティングファームで経験を積み、40代で新たな挑戦を選ぶ。
その歩みは決して一直線ではありません。
だからこそ、多くの方の心に響くのではないでしょうか。
英語は、人生を豊かにするための入り口のひとつです。
そして、本を読み、人と語り合うことで、その扉はさらに大きく開いていきます。
もし皆さんが「英語を学ぶその先」を見てみたいと思われるなら、ぜひ一度English Library Caféをのぞいてみてください。
そこには、知的好奇心を分かち合える仲間との新しい出会いが待っているかもしれません。
English Library Caféウェブサイト
English Library Café – Expand your horizons & cultivate curiosity
